【東京・竹橋】見る者のイメージを膨らませる「ゲルハルト・リヒター」

夕方になると秋の虫の声が聴こえてきました。さあ、芸術の秋がはじまります。一人の作家の作品から、これほど違ったイメージを膨らませられる作家はそれほどいないのでは?東京国立近代美術館で「ゲルハルト・リヒター」がスタートしているので行ってきました。60年の画業を122点の作品からひもとく美術展。心に刺激と栄養を!内面を磨く美術館巡りを楽しんでみてはいかがでしょう?

見ておきたい美術展、現代美術最高峰のゲルハルト・リヒター

現代美術作家ゲルハルト・リヒターは、ドイツ・ドレスデンで生まれ今年で生誕90年、画業60年。

現代で最も重要な画家と言われています。

油彩画・写真・デジタルプリント・ガラス・鏡などを使い、具象と抽象を行き来しながらなんともつかみ所がなく、だけど心に残るものがあります。

今回の美術展では撮影が可能なものが多いのも楽しいところ。

この「エラ」はポスターのビジュアルにもなっていてとても印象的です。

写真を撮ってみると普通に見るのとはまた違う発見もあって面白さが倍増します。周りにはカメラを構えた人が思い思いに写真を撮っていました。

リヒター近年の最重要作品、到達点であり転換点「ビルケナウ」

「ビルケナウ」は日本初公開!

「ビルケナウ」の抽象画の下層にはアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所で、囚人によって隠し撮りされた写真を元に書き写したイメージが隠されています。

ホロコーストを主題にし、この深刻な問題に対しての表現の方法をリヒターは長年も見つけられずにいましたが、ようやく完成させたのだとか。

現代にも繰り返される人間の最も目を背けたくなる問題にリヒターは表現という手段で対峙し、これがリヒターにとって長年の芸術的課題であり、到達点そして転換点となったようです。

4枚の抽象画「ビルケナウ」と横長の鏡の作品「グレイの鏡」が設えてあり、際限なく複製されていく暴力と悲劇を思わせる空間でした。

見る人によって変化する「8枚のガラス」

8枚のガラスはそれぞれが違う角度で並べてあり、いろいろなものが映り込んで偶然が作り出す景色がファンタジック!

ガラスのまわりには写真を撮っている人が思い思いに楽しんでいました。

不思議な現象に浮遊する人々をいつまでも眺めていたくなります。

エネルギーに溢れた作品は見ているととても刺激的を受けます。

リヒターの作品がこれだけ見られるのはなかなかないこと!この機会に楽しんでみては?

「ゲルハルト・リヒター展」
東京国立博物館近代美術館
期間:2022年6月7日(火)~10月2日(日)
開館時間:10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00)※入館は閉館30分前まで
※ただし、9月25日(日)~10月1日(土)は10:00-20:00で開館
休館日:月曜日[ただし9月19日、9月26日は開館]、9月27日(火)