【福岡・北九州グルメ】おいしいを超えた感動的体験!戸畑の地で寿司オペラを楽しむ「照寿司」
「sushibae」、「寿司オペラ」といった言葉をご存じでしょうか。SNSとは対極にありそうなとあるお寿司屋さんの提供スタイルがSNSを通してバズり、「sushibae」、つまり寿司映えとして世界的に有名になっています。今回は、福岡県北九州市戸畑にある、地元民に支持されるお店から、世界へ羽ばたくお店となったお寿司屋さんをご紹介します!
北九州市戸畑区「照寿司」
今回紹介するお店は「照寿司」。Instagramやメディアなどで見聞きしたことがあるという方もいるのではないでしょうか。そう、決め顔とともにお寿司を提供する姿がSNSでも話題となっているお店です。食べログアワードブロンズ、寿司百名店にも選出されています。
話題となったのはここ数年ではありますが、実は創業から60年間変わらず北九州•戸畑の地で長く続いているお店です。現大将の渡邉貴義氏は三代目であり、もともとは地元民の利用が多いお店だったといいます。
この記事では、そんなお店がどのようにして世界的に有名になったのかを解明しながら、コースの全貌をご紹介します。本当に細部まで書くので、訪問の予定がある方はここで読むのをやめることをおすすめします(笑)
訪問まで
予約必須のお店であり、飲食店予約プラットフォームであるOMAKASEからの予約が可能です。35,000円のおまかせコース(除サービス料)のみ選択できます。今回は照寿司訪問をメインに据えた旅行ということで、訪問の2カ月前に予約を取ったうえで、東京からの交通手段を予約しました。
当日はレンタカーで訪問。専用駐車場はないためコインパーキングに駐車しました。公共交通機関による訪問は不可能と言ってよく、タクシーで訪問する方が多そうです。
お店の外観は、街のお寿司屋さんそのもの。ビルの2階にカウンターがあります。
案内されて最初の驚き。テーブルにスマホスタンドとスマホクリーナーがあるのです。加えてスマホの充電がなくなったら充電できるので声をかけてほしいとのお弟子さんからの発言。ひたすらに写真を撮ってほしいという配慮がうかがえます。
定刻前に大将が登場。今回は他団体を含め8席が用意されており、全員がそろうまでどこから来たのか、照寿司を知った経緯など大将との雑談でコースの開始を待ちます。
コーススタート
17:30、コーススタート。
まずは大将から訪問への感謝と、満腹になって帰ってほしい旨、そしてスマホのカメラロールを大将で埋め尽くしてほしい旨のあいさつがありました。
2019年にはニューヨークにおいてポップアップイベントに招待され、ニューヨークタイムズの全面広告にも掲載されたとのことです。その際の本紙面とともに1枚目をいただきました。
本日のマグロである塩釜産マグロのネギトロに、山口県萩沖産の赤ウニ、イタリア産のオシェトラキャビアを惜しげもなく使った一品です。
大将が「ノリが主役」とおっしゃるこの一品は、マグロ、ウニ、キャビアといった主役級の素材たちをまとめあげ、はっきりと主張する有明産のノリの香り高さが印象的でした。
これが1品目です。いきなり先頭打者ホームラン級のインパクトを残していきます。
続いてワタリガニのジュレ。こちらにもウニが乗っています。ワタリガニやウニのうまみはもちろんですが、特にトウモロコシの甘みが印象的な一品でした。
続いて大将が大きな包丁を構えてポーズ。これは外国人観光客に受けがよさそうです。
先述したとおり8名のお客さんがいる中で、一人ひとりにカメラ目線でポーズを取って写真撮影の時間を作ってくれます。
ちなみに撮影のタイミングは気まぐれではなく、全メニューで撮影のタイミングを設けてくれます。
アワビは肉厚に切られており、全く苦みのない肝ソースとよくあっています。
このメニューはタコとナスでおたんこなす、といった大将の冗談が止みません。笑
大将は決め顔の印象から怖そうなイメージを抱いていましたが、ポーズの時以外は優しい表情で、常に冗談を交えつつ客を楽しませようという意識のもと接客されています。
はるばる九州に来られたのでイカを、とのことで提供されました。ソースは大分県産の「卵王」と塩だけで仕上げられており、イカの甘みと卵黄ソースのうまみがよくあっています。
かむとジュワッとあふれ出すうまみ、パリパリに焼かれた皮目の食感が素晴らしい一品です。間違いなく今まで食べた中で最高ののどぐろでした。
続いて目の前にゴム手袋が置かれます。これは食べられませんよ、とお弟子さんからも冗談が飛び交います。
ゴム手袋をはめた後、手渡しで提供されたのがクエのカマの唐揚げ。ゴム手袋は、箸でなく手を使ってそのままかぶりつくためのものでした。
これがうますぎる!知らされずに食べたら鳥の唐揚げと間違ってしまうようなジューシーでうまみの強い一品です。
次にくん製容器を開けるパフォーマンス。スロー撮影でうまいこと煙の様子を収められるよう、シャッターを切るタイミングまで指示してくれます。
ここに動画を載せられないのが残念でなりません。
いぶされていたのは宮崎県産のカツオ。そのカツオとシャコの素揚げがハーブとともに提供されました。香り高いカツオがとても印象的でした。
クエを持ち上げるパフォーマンス。この日のクエは27kgとのことで、これを持ち上げつつお客さんの撮影に応え続ける大将のパワーとホスピタリティに恐れ入るばかりです。
一品料理の締めはクエ汁。クエの骨で取った出汁に、クエの身が入った一品で、ネギが大量に散らされています。
あくまでネギが主役とおっしゃるとおり、ネギの辛みがスープの熱で緩和され、クエのうまみとともに体の芯まで染み渡る一品でした。
宮城•塩釜産のマグロです。マグロの旬は冬ですが、夏は夏で赤身のうまみを楽しめて価値があると大将はおっしゃっていました。これだけのサイズのマグロを目の前にして、これから始まる寿司の時間がさらに楽しみになります。
いよいよ本番
まずは串刺しにしたウナギとともにポーズを取ってくれた後、ウナギドッグが提供されました。
大ぶりに切られたウナギはパリパリに焼かれており、身も分厚く濃厚なうまみがあります。
一品目と同様ノリの香りが凄まじく、ウナギとシャリのコンビを引き立てています。
Twitterのマークを模したメニュー、との冗談とともに提供されたのは締めサバ。脂のノリがよくサバのイメージを覆します。
全て掲載することはしませんが、後半になってもなお、このとおり提供するたびに決めポーズをとってくれます。そろそろ飽きて撮影していないお客さんもいましたが、筆者は全てカメラロールに収めました!
Twitterの話もそうですが、当初Facebookから始め、Instagramを通してバズったことなど、お店の歴史についても話してくれます。
流行をうまく取り入れていくその姿勢が、照寿司を有名にした要因なのでしょう。
写真では伝わりませんが、とても身が分厚く強いうまみを感じます。
寝かせて熟成されており、ねっとり感がありつつ強いうまみを持っています。
先述したとおり今の時期旬ではないマグロですが、しっかりと脂が乗っておりうまみのつよいネタです。
シャリを上にしてホットドッグのようにして食べてください、とのことです。右で受け取るか左で受け取るかによって渡し方を変えるそうです。
江戸前では御法度とされている手渡しによる提供も、エンタメ性を追求する照寿司では当たり前のように行われます。
「その辺で取れた」イワシとのことですが、産地など関係なくうまいネタしか出てきません。
もちろん小骨なんかはなく、包丁が入れられ丁寧に仕事がされています。
貝の甘みとシャリの酸味、シャクっと小気味よい食感がクセになるネタです。
照寿司のシャリは300年以上の歴史を持つ福岡•大川の庄分酢を使用しているとのこと。照寿司専用に熟成された酒かすから作られたお酢で、酒かすならではの奥深い香りを数々のネタとともに楽しめます。
個人的に好きな味でしたが、人によっては好みが分かれるかもしれません。
肉のような味がします、と言って渡されたとおり、焼き肉のタレのような味わいの玉ねぎソースとうまみの強いトロの組み合わせは、まさに生の牛肉を思わせるような上質かつパンチのある味わいを感じました。
一番安いネタです、との発言とともに渡されましたが、そこにチープな味わいはありません。酸味がありシャリとよくあっています。
ドキュメンタリー撮影のために来店した海外の映画監督がスイーツとまで評した甘みの強いイカとウニのコラボレーションです。
タレか塩を選択できます。片方をおすすめするともう片方を選んだ方に申し訳ない、あくまで両方おすすめとのことでした。
筆者はタレを選択。ほろっと柔らかい穴子にタレの甘辛い味わいが合わさって最後の一貫にふさわしいネタでした!
卵焼きは車エビが練り込まれていて香り高く、ふわふわでカステラのような一品でした。
これで終わりか、と思って気が抜けたところに大将が大きなスイカを持って登場。デザートタイムです。
スイカは北九州•若松産の若松クイーンで、スティック状にして食べられるよう変わった切り方で提供されました。信じられないほど甘くみずみずしいスイカで、追加で2本いただいてしまいました。
バニラビーンズが惜しげもなく使われており、おそらく練乳由来の濃厚な甘みが強い、締めにぴったりの一品でした。
スイーツを完食した後、大将から一人ひとりに名刺が手渡され、全てのコースが終了しました。
使用した箸にはクリーナーがついており、お土産として持ち帰ることが可能です。わが家の箸として活躍中です。
コースにソフトドリンクをつけてほぼ4万円、1回の食事に支払う金額としてはトップクラスの飲食店と言えるでしょう。
普通の外食における値段設定が、材料費とその調理に対する対価であるところ、照寿司はそれらに大将の話術、写真撮影といった付加価値が載っていると言えます。とはいえ、こと寿司に限れば、この価格帯のお店が決して珍しくないことを考えれば、むしろ安いとすら言えるのではないでしょうか。
常日頃、安いこと(高級店であればその金額に見合うこと)、美味しいことに加えて、「楽しい食事」を追求している自分にとって、この照寿司における食事が人生における最高の食事と言えるものであったことは言うまでもありません。
アクセスのハードルも値段も安くないことは否めませんが、それに見合う価値のある名店です。
グルメを自称する人はぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。きっとこれまでにない体験、感動を味わえることでしょう。
詳細
■照寿司
住所:福岡県北九州市戸畑区菅原3-1-7
アクセス:JR小倉駅からタクシーで17分、JR戸畑駅からタクシーで5分
定休日:不定休
営業時間:12:00~14:00、17:30~22:30(完全予約制)