【山梨旅】女性醸造家が奮闘!2022年に富士河口湖町に誕生した「セブンシダーズワイナリー」

先日、“やまなし美酒美食フルコース”イベントという山梨県産の食材とお酒のスぺシャルなペアリングを味わう招待制のメディアツアーに参加しました。その時に訪れたのが2022年に河口湖付近に誕生した「7c|seven cedars winery」(セブンシダーズワイナリー)。富士北麓に位置するワイナリーで、ブドウの個性を最大限に表現する女性醸造家の貴重なファーストヴィンテージを堪能させてもらいました。

いままでワイナリーがなかった富士北麓地域が注目される理由

「7c|seven cedars winery」で醸造を統括する鷹野ひろ子さん

東京・新宿から高速バスに乗ること約2時間。“ワイン王国”と言われる山梨県、その富士北麓地域の富士河口湖町に到着すると、2022年6月に開業した大型複合施設「旅の駅 kawaguchiko base」が見えてきます。

広大な敷地内には物販店舗、レストラン、宿泊施設(※)があり、隣接するに場所に2022年8月に開業した「7c|seven cedars winery」があります。山梨県内には100ものワイナリーがあるとされる中、これまでほとんどワイナリーがなかったのが、ここ富士北麓地域。(※宿泊施設は2023年春以降に営業スタート予定)

「7c|seven cedars winery」の外観

山梨ワイン県を代表する女性醸造家 鷹野ひろ子さんは、ワイン専門誌「Winart」 (2020年10月号 美術出版社発刊)にて、「日本ワインの造り手100人」に選出されました。今は「7c|seven cedars winery」の醸造を統括しています。彼女がブドウの農家たちと団結して、“農家をまるごとワインにする”ような発想で取り組んでいるワイナリーなのだとか。

一般的なワイナリーでは造り手である“醸造家”が注目されるものですが、ここでは“ブドウ栽培者”に光を当てたワインづくりを目指しています。ワインの銘醸地として知られる勝沼町在住の鷹野さんは、次のように説明してくれました。

「これまでここ富士河口湖エリアは、水田や野菜畑がほとんどで、ブドウの栽培はあまりされていませんでした。この辺りが標高850mと非常に冷涼な地のため、冬の寒さが厳しく、果樹が育ちにくい環境だったからです。」

遊休農地で土づくりをし、ブドウの苗植えをする鷹野さんたち

しかし近年の地球温暖化の影響で、これまでブドウが栽培されてきた標高600m、700mの地から、より標高の高い地域に栽培地がシフトしてきているというのです。鷹野さんは続けます。

「富士河口湖エリアはとても有望なワイン生産地の一つ。私たちはブドウ栽培に適すように、水田後の荒廃した土地を水はけの良い土に変えるところからスタートしました。かつては湖底だった土地は石も多く、耕すのにひと苦労でした」。

農家ごと仕込みタンクを分けて、ワインの個性を引き出す

オーク樽(だる)の前でこだわりを語る鷹野さん

同ワイナリーでは自社のブドウ畑を有し、鷹野さんも自らが栽培をし、近隣にある13の農家と連携しながらブドウを育います。またそれを醸造する時は、農家ごとに醸造タンクを分け、その地で獲れたブドウの特性に合わせて醸造法も少しずつ変えているのです。

「同じブドウでもシャインマスカットなど高級品種が高く売れる時代です。醸造用ブドウ栽培者が減らないように、山梨の景観と歴史と産物を守っていきたいと考えています」と鷹野さんは力強く語っておられました。

農家ごとに醸すタンクも分けて、ワインの個性を引き出す

甲州やマスカット・ベリーAといった山梨を代表するブドウの品種をメインに、ワインを醸造し、最後はオーク樽(だる)で熟成させることで、甘やかで香ばしい香味をプラス。フランスから取り寄せた古樽と新樽、そしてアメリカンオーク樽も使い、できあがりの香味を試行錯誤させながら理想の味を追求しています。

一方、醸造で残るブドウのカスは鶏の飼料などに活用され、完全利用されています。以前、ブドウのカスを羊の飼料に使った「ワインラム」の料理を、山梨県内で取材したことを思い出しました。山梨県は捨てるはずのものを有効利用し、SDGsの取り組みにとても積極的。

ちなみに同施設内には、電気自動車用の充電ステーションもありました。テレビで見たことはありましたが、実際に見るのは初めて。

瓶内2次発酵の優美なスパークリングにうっとり♡

瓶内2次発酵のスパークリングワイン

ワイナリー見学の後にこの日のディナーで味わったのは、同ワイナリーのファーストヴィンテージとなるワインと、鷹野さんのこれまで手掛けたワイン計3種。2022年12月18日に発売される瓶内2次発酵のスパークリングワインを、ありがたいことにひと足早く味わうことになりました。

「こちらのブドウ生産者は大澤さんです」と鷹野さんが説明してくれたワインは、デラウェアというブドウ品種を98%使用したもの。

シャンパーニュのように1万個はあろうかと思われる繊細な泡がひとすじに立ち上り、とてもエレガント。白桃やマスカットのようなフルーティーな香りで、適度なキレがあり、上質なおいしさでした。

さらにシャルドネのスパークリングも登場。こちらも瓶内2次発酵させたもの。すっきりとした酸味と果実味を楽しめました。

鷹野さんの手掛けた甲州という品種の白ワイン

さらに日本の固有品種、甲州を使った2019年ヴィンテージの白ワインも。果実味と樽(たる)の香りのバランスが非常によく、とても飲みやすいので、どんなお料理にも合いそう。「7c|seven cedars winery」の今後に期待が高まります。

最近、再び増えてきたインバウンド観光やマイクロツーリズム。その訪問先としても注目されそうな富士河口湖町。地域の人々のつながりや造り手の思い、風土の魅力をそのままストレートに醸す、“小さなワイナリーならでは”の新たな取り組みが芽吹いていました。

電車でワイナリーに行く場合は、新宿からJR大月駅に向かい、そこから富士河口湖行きの電車に乗るといいようです(新宿から富士河口湖駅への直行の高速バスも便利でした)。

2023年春頃にはテイスティングを楽しめるワイナリーツアーやワインイベントを開催予定とのこと。今後がとても楽しみです♪

「ラーほー」や「旅する水餅」などご当地のお土産も購入できる

ちなみに同じ敷地内にある「旅の駅 kawaguchiko base」では、ほうとうとラーメンが合体したご当地麺「ラーほー」や、赤と青のご当地レトルトカレーなどをお土産に購入できました。

限定商品の「旅する水餅」や、青いクリームソーダーなども。隣接するベーカリーショップも、地元の人の話ではとても評判がいいのだとか。ぜひ立ち寄ってみてくださいね。

このツアーで味わったお料理のことは、また次の記事で詳しくご紹介します。お楽しみに!

7c|seven cedars winery(セブンシダーズワイナリー)
所在地:山梨県南都留郡富士河口湖町河口513-5
電話:0555-25-7224(作業中のため、出られないことが多いので、その場合はEメールで)
Mail:info@7cwinery.com
営業時間:9:00-16:00(ワイナリー前テラスのみ開放)