【マレーシア・ペナン旅】父の屋台を受け継いだ娘が母と二人三脚。ついにミシュランガイドに掲載
東南アジアで急速な発展を遂げているマレーシア。去年の12月、マレーシア初となる「ミシュランガイド」が発売され、首都クアラルンプールと昔から美食都市として知られるペナンの店が97店掲載されました。先月、仕事でマレーシアを訪れた際にクアラルンプールからペナンまで飛行機でひとっ飛び! 「ミシュランガイド」に掲載されたペナンの人気屋台「Misai Mee Jawa」(ミサイ ミー ジャワ)を訪問してみた。
父が倒れて大学進学を断念。一番下の娘が店を継ぐ決心を。
中央が2代目店主で娘の黄さん。母(右)と一緒に奮闘してきました。
リゾートアイランドとして知られるペナン島へは、首都クアラルンプールから飛行機で約1時間。ペナン州はユネスコ世界文化遺産であるジョージタウンを中心街としたペナン島と、島の向かい側にある西海岸北部のウェスレー地方から構成されます。
今回、訪れたのはウェスレー地方の中心部バタワース。(ペナン島内の記事もアップしていますので、ぜひそちらも読んでみてくださいね!)
ペナン島からバタワースへは瀬戸大橋のような大橋を車で渡るか、フェリー(高速ボート)に乗って渡るかのどちらか。今回は行きは大橋で、帰りはボートを利用しました。
というのも、私が訪れた金曜日はイスラム教徒にとって礼拝の日。夕方に近づくにつれてモスクに向かう車で大橋が渋滞するため、帰りは車ではなく船での移動にしたのです。
多民族国家マレーシアにはイスラム教徒の多いマレー系、華人(中国系)、インド系などが混在しており、それぞれの風習を日常生活で感じられ、その多様性も魅力の一つ。
大橋を降り、バタワースの大通り沿いに面した屋台エリアの一角にあるのが人気屋台の「Misai Mee Jawa」。2代目の女性店主、黄(コウ)さんは、この屋台を母と二人三脚で20年以上も切り盛りして来ました。
黄さんは振り返ります。「19歳の時、台湾の大学に進学する予定だったのですが、突然、父が倒れたのです。自分の夢を断念し、父の後を継ぐ決心をしました。私は5人姉妹の末っ子で、姉たちは嫁に行ったり、すでに大学に進学したりして、私しか跡継ぎがいなかったのです」。
長年の常連客の期待を裏切らないように、父が考案した看板メニュー「Mee Jawa」のレシピを受け継ぎ、今でも朝7時から仕込みをスタート。試行錯誤を繰り返し、母と二人三脚で踏ん張ってきました。
その結果、昨年ついに「ミシュランガイド」に掲載。黄さんの長年の努力が、いま花開きつつあります。
ジャガイモとサツマイモのとろりとしたオリジナルあんかけ麺
「ミシュランガイド」で紹介された看板メニュー「Mee Jawa」
同店の看板メニュー「Mee Jawa」は黄さんの父、つまり初代店主のレシピですが、その起源には諸説があるそう。Mee(麺)とJawa(ジャワ島)なので、インドネシアから波及した麺料理という説が有力ですが、黄さんがジャワ島の友人と現地を訪問した際にはそういった料理は発見できなく、知っている人も見つからなかったそう。
ペナン州にはいくつかの「Mee Jawa」の店があるようですが、共通しているのはとろりとしたスープ。すりつぶしたジャガイモに水や塩、唐辛子などを加えて約5時間も煮込んで仕上げます。同店では特別にサツマイモも加えることで穀類のやさしい甘さに深みもプラスしています。
黄さん(中央)とクアラルンプールからわざわざ視察にやって来た同業者のお客さん
ゆでた中太麺にスープをかけ、特大のエビせんべいやレタス、砕いたピーナッツ、フライドオニオンなどをトッピング。緑のキンカンをギュッと絞って、エビせんべいをザクザクと割ってかき混ぜると、中からモヤシや豆腐、ゆで卵、唐辛子ペーストがおめみえ。意外に具だくさんです。
柑橘系の酸味、塩味の効いたエビせんべいの香ばしさ、とろりと甘やかなソース。これは地元でも独自の組み合わせでファンが多いのだそう。地元客の話では、ここまでパリパリしたエビせんべいを提供している店は珍しいとか。エビせんべいが特大なので映える写真も撮影できます。
初代店主の頃から足しげく通うご近所の常連客たち。屋台はいつも温かさに包まれている。
「Mee Jawa」は小サイズで5リンギット(約150円)ですがボリュームはそこそこあります。現地の金銭感覚が分からない外国人の私でさえ、お得なのだと理解できます。肉は一切使用していないので、ボリュームがあっても意外に軽く、ベジタリアンなどにも喜ばれそう。
「この辺りは工業地帯で、近隣で働く人々や地元住民の軽食として喜ばれています」と黄さん。「父はこのあんかけMee Jawa1本で勝負して来ましたが、私の代になってから、もっと客層を広げたい思い、Mee Jawaの炒めタイプも開発しました」と説明してくれました。
もっちりとした麺がクセになるMee Jawaの炒め麺
2代目が考案したMee Jawaの炒めタイプは同じ材料を使っていますが、中華鍋で麺を炒め、一気にスープとからませるのでもっちりした食感がクセになり美味。こちらも緑色のキンカンの酸味がアクセントになっており、年配の男性客に特に人気。
「次はうちのMee Jawaを、ホワイトカレーミーのようなペナンを代表するインスタントヌードルにしたい」と意気込む黄さん。さらに若者向けのメニューも開発するのだそう。
そんな黄さんの意気込みはSNSなどを通じて首都クアラルンプールにも伝わっているようで、私が訪れた日には同じように飲食店を営む経営者がクアラルンプールから視察に来られていました。黄さんの夢が実現するのはそう遠くないかもしれません。
マレーシアきっての食い倒れの街、ペナン。屋台とはいえ、あなどれないおいしさでした。ペナンと言えば世界文化遺産のジョージタウンですが、その観光の合間に、マラッカ海峡を渡ってバタワースへ移動する旅は、とても海風が気持ち良いのでおすすめです。
看板のイラストのヒゲ顔の男性が初代店主で黄さんの父。女性は黄さんの母。
亞獅爪哇面 MISAI MEE JAWA(ミサイ ミー ジャワ)
所在地:6794 Jalan Raja Uda, Taman Aman Jaya, Butterworth, Seberang Perai, 12300, マレーシア
営業時間:11時-18時
定休日:水曜日
*屋台なので営業は天候に左右されることもあるので、訪問の際はFacebookなどで確認してみてくださいね