高品質なのにコスパがいい!注目のモルドバワインとは?王室御用達ワイナリー「プルカリ」に感銘

最近ワイン好きの間で注目されているモルドバワイン。世界最古のワイン生産国と言われるモルドバ共和国は、東欧のウクライナとルーマニアに挟まれた内陸の小さな国です。肥沃(ひよく)な土壌が広がり農業が盛んで昔からぶどう栽培とワイン醸造がメイン産業でした。国際品種のぶどうだけでなくその土地ならではの土着品種の栽培も盛ん。王室御用達として知られるワイナリー「プルカリ」を味わった時の忘れられない体験をレポート。

高品質なのにコスパがいい、それがモルドバワインの魅力の一つ

モルドバのワインといえば1827。「プルカリ」のワイン

普段、フランスやイタリア、スペイン、あるいはアメリカなどのワインに親しんでいる人が多いかもしれませんが、東欧のモルドバ共和国は古代からのワインの国として有名です。ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンといった国際品種だけでない固有の土着品種もあることや、その品質の高さが魅力になっています。

最近では一般的なワインショップでも少しずつ見かけるようになってきたモルドバワイン。近年、円安で輸入ワインの価格が高騰する中でも比較的親しみやすい価格であることや、そのコストパフォーマンスも注目の要因になっています。

モルドバワインにはコウノトリとぶどうをモチーフにしたマークが付けられています。日本ではコウノトリが赤ちゃんを運んでくるという逸話がありますが、モルドバにもコウノトリが幸運を運ぶエピソードが存在します。

それはシュテファン・チェル・マーレ時代、百戦錬磨のシュテファン公がある大きな戦闘で追い詰められ、疲労困ぱいで立ち上がれなくなった時のこと。一羽のコウノトリがぶどうの房をくわえて飛んできて戦士たちにそれを与えたところ、活力を取り戻して戦局が逆転。見事に勝利したという話です。

義務化されているわけではないのですが、現在もほとんどのモルドバワインにモチーフとしてこのマークが付けられています。モルドバワインを手にしたら、ぜひ探してみましょう。

1827年に創業したモルドバの有名ワイナリー「プルカリ」。ワインイベントのブースにて

モルドバワインの有名な土着品種といえば、フェテアスカ・ネアグラ(「黒い乙女」という意味の赤ワイン用品種)、フェテアスカ・アルバ(「白い乙女」という意味の白ワイン用品種)、フェテアスカ・レガーラ(「高貴な乙女」という意味の白ワイン用品種)など。

ワインの試験では、モルドバワインと言えばこれら品種名の意味(〜な乙女)を問う問題が定番になっています。フェテアスカは乙女の意味で共通なので、あとは白いか黒いかを頭にインプットするだけなので意外と簡単です。ちょっと知っているだけでワイン通ぶることもできるかも!?

モルドバワインでは、メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンなどの有名な国際品種が、国境をこえるとどのように変化するか比較するたのしみもあれば、その土地でしか栽培されない希少な土着品種を、生まれて初めて味わって衝撃を受けるというたのしみもあります。

アロマティックな「ヴィオリカ」白ワインにほれぼれ〜♪

左:プルカリの海外事業マネージャーのRemeus氏/右:一般社団法人ワイン・オブ・モルドバ・ジャパンの代表理事 遠藤エレナさん

一般社団法人ワイン・オブ・モルドバ・ジャパンの代表理事でモルドバ人の遠藤エレナさんによると、モルドバには地理的表示PGIの他に「家庭ワイン」の区分があるので、自家消費用として15アール以下の畑の場合は登録申請などをしないでもワインを合法的に造れるとのこと。水のように毎日、大量のワインを消費するのがモルドバ国民なのだとか。たくましい。

そんなモルドバワインの長い歴史を支えてきた名門ワイナリーの一つが、1827年創業の「プルカリ」(purcari)です。王室ご用達ワインとしても有名で、世界各国へ輸出されており、最近では日本でもワインショップなどで手軽に入手できるようになってきました。

「プルカリ」は1878年、パリ万博で開催されたブラインド・テイスティングでまず注目を集めました。フランスのワイン専門家たちは濃いルビー色の辛口赤ワインに感動し、新しいボルドーワインであると信じ込んでいました。しかしそれはモルドバの小さな村で造られた「プルカリ」のワインだったと知り、世の中を驚かせることになったのです。

この時のワインが「プルカリ」のシンボルワイン「ワインネグル・デ・プルカリ」(Negru de Purcari)で、国際展示会で初の金メダルを獲得したのでした。その後も「プルカリ」のワインはボルドーやブルゴーニュのワインと同等の人気を得て、権威ある国際コンクールで100個以上のメダルを獲得しています。

オリーブやオリーブオイルともとても相性が良いヴィオリカ品種の白ワイン

モルドバワインを試すならまずは「プルカリ」。さっそく土着品種の白ワイン「viorica de purcari」からテイスティングしました。

白い花のような気品があり、かつライチやマスカットのようなトロピカルでアロマティックな香りが広がります。グラスを口に近づけた瞬間に、思わず深呼吸して笑顔になってしまうハッピー・ワイン。

華やかな香りがとても印象的で、その感動的な香りを誰かに伝えたくなります。女子会などでみんなで味わったら、その香りの話だけでも盛り上がりそうです。すてきな香水を見つけた時のワクワク感に似た体験を女子友と楽しめるでしょう。

ヴィオリカの白ワインに合うオリーブを使った前菜

感動の香り体験から始まる土着品種「ヴィオリカ」(viorica)を100%使用した白ワインは、口に含んでからはスルスルと飲みやすく、ほどよい酸味があるので鮮魚のカルパッチョなどにとてもよく合います。

「ヴィオリカ」はモルドバ共和国では多くの女性に付けられている名前でもあるそう。確かに華やかで気品があふれるワインの印象は女性そのもの。

モルドバは遠い国だと思っていたのに、味で日本につながっていた

「プルカリ」の土着品種ララ・ネアグラの赤ワイン

次は「プルカリ」の赤ワイン、モルドバの希少な土着品種ララ・ネアグラ。古代から栽培されている黒ぶどう品種で、華やかでエレガントな香りが広がります。

口に含むと赤系ベリーの果実感が感じられ、ビロードのようなタンニン。そして面白いのが後味で、どこか懐かしい記憶がよみがえりそうに。昔どこかで味わったような、しょうゆにも似た香ばしい香りが残り、思わず和食とも合わせてみたい!と思ってしまうのです。

調和がとれた味わいの中に独自の個性が光り、それが日本人の記憶(舌)にも訴えかけてくるではありませんか。モルドバは東欧の遠い国だと思っていたのに、味では一直線につながっているような、急に身近に感じる不思議な瞬間でした。ぜひ日本人の皆さんに味わってほしい面白い品種だと感じました。

数々のアワードを受賞している「プルカリ」のワイン

もちろん「プルカリ」にはピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンなどの国際品種のワインもあります。アワードを獲得した注目ワインも多数。世界最古のワイン生産国というだけあり、何度でも飲みたくなる奥深さ。

2024年8月14日(水)から8月20日(水)まで都内の新宿伊勢丹グランカーヴにてモルドバワインのイベントも開催されているようです。新作ワインを含め14種以上がラインナップしているようなので、興味のある方は立ち寄ってみては?