【山形・庄内】奥田政行シェフが「湯どの庵 フロム アル・ケッチァーノ」で初のオーベルジュを開業

2025年7月24日、山形県鶴岡市の湯田川温泉に注目の旅館が誕生しました。その名も「湯どの庵 風呂夢Al-che-cciano」。そう、日本が誇るガストロノミーレストラン「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ・奥田政行氏がプロデュースした同社初のオーベルジュです。東京でも人気の奥田シェフのソルトオイルすしを楽しめ「奥乃寿司」も旅館内に併設。庄内の食と温泉文化が満喫できる旅宿をさっそくレポート。

開湯1,300年をこえる温泉宿、大正時代の建物らしい和の風格

趣深い「湯どの庵 風呂夢Al-che-cciano」のエントランス

庄内空港からタクシーで約25分、鶴岡駅からタクシーで約20分、ひっそりとした温泉地に到着しました。湯田川温泉は庄内藩酒井家も湯治に使ったといわれる温泉地。温泉街の鎮守・熊野神社、地元の人々にも愛される共同浴場、モウソウ竹や桜並木などがある温泉地で、ひときわ個性が豊かな温泉宿が「湯どの庵 風呂夢(フロム)Al-che-cciano」(以後、湯どの庵)です。

「湯どの庵」は大正時代に建てられた旅館。黒格子の門をくぐると、石畳の小径と行燈のやわらかなあかりや、涼やかな竹がお出迎え。館内には温かな風情が広がり、中庭にはまぶしいほどの緑が美しく輝いています。

思わず深呼吸したくなる美しい中庭と黒檀のような長い廊下

黒光りする廊下を歩けば、右手には四季折々の表情を見せる鮮やかな緑の庭園が広がります。大きく開かれた窓はまるで一枚の絵画のよう。深みのある床と木組みの天井が和の風格を感じさせ、大きな窓越しに降り注ぐ自然光と緑の輝きが、静かな時間へと誘ってくれます。

廊下の一角にはくつろぎのソファ椅子。読書やお茶でまったりと

ちょうど中庭の緑を眺められる位置に、くつろぎのソファ椅子。黒塗りの床と梁、白壁のコントラストに温かな照明が映えるモダンな空間。今朝まで東京にいたことがまるで嘘のよう。時間の流れがふっとゆるみます。

源泉かけ流し温泉の後は、ゴ・エ・ミヨに3年連続で登場の「アルケ」へ

 「湯どの庵」の寝室。和洋が融合した独特のスタイル

店内のデザインや家具は「ROCKSTONE」で知られる世界的なデザイナー、故 岩倉榮利さんによるもの。宿プロデューサーでもある岩倉さんらしさが特に垣間見られるのは寝室です。床から一段高い木の台に布団を敷いたユニークなスタイル。

ヒノキの香りが漂う温泉風呂。写真は男湯

さて、夕飯の前に温泉へ。源泉かけ流しで、源泉の温度が43℃とやや低めなので、ゆっくりと長くつかるのに最適。露天風呂もあり、季節の風情も感じられます。お風呂の後は、つるりとしたお肌に変わっていてうれしい!

田んぼのど真ん中にある「アル・ケッチァーノ」。客席からの景観も最高!

夕飯は宿から車で15分のところにあるイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」(別途料金)。旅館の予約時に、一緒にレストランの席も予約しましょう。連泊する場合は2日目の夕食は旅館内の奥乃寿司になるそう。東京・銀座の店でも好評のソルトオイルすしを提供してくれます(曜日限定・要相談)。

庄内浜の魚介を使った「岩牡蠣とモロヘイヤケッカソース」

ゴ・エ・ミヨに2023年から3年連続で取り上げられている「アル・ケッチァーノ」では、地元食材を使った料理が豊富。庄内浜で水揚げされた魚介を使った「ムースを乗せたのどぐろと長芋のバルサミコ磯部焼き」、地元の丸山さんが育てた羽黒緬羊(はぐろめんよう)という、だだちゃ豆のさやを食べて育った羊肉のグリルなど、黒板にぎっしりとメニュー名が書かれてあります。

具材がきゅうりだけ!でも最高に美味!「外内島きゅうりのフェデリーニ」

今回は13品からなるコース料理を予約しました。「お魚のカッペリーニ」「食感カルパッチョ」と庄内浜の新鮮な魚介を味わった後、鮎の脂のうまみとその内臓の芳醇(ほうじゅん)なほろ苦さをナスが吸い込んだ「鮎と茄子」に舌鼓。

「外内島きゅうりのフェデリーニ」はきゅうりのペペロンチーノのような逸品で、シンプルだけれどきゅうりの青い風味やほのかなにが味が最高に美味。つぶつぶした手打ちパスタのフレーグラは魚介のうま味がしっかりと味わえ、筆者の大好きな「庄内豚と尾花沢スイカ」はジューシーなスイカと豚肉のうま味の取り合わせが絶妙でした。

地元食材をふんだんに使った絶品朝食で朝からととのう

地元の野菜や庄内浜の魚介が詰まった朝食

「湯どの庵」の朝食はこれまた絶品。朝食をつくるためにスタッフが早朝、湯殿山の頂上付近にまで湧き水をくみに行き、その時に摘んだ野花を花瓶に活けて、清々しい朝で出迎えてくれるのです。

その湧水で炊いた井上農場のご飯と、庄内浜の海藻(アカモク)の味噌汁で、体が整います。。

朝食のお料理には地元の食材ばかり。上の写真を右上から順番に、柳ガレイの焼き、山形牛のトマト煮込み、むき蕎麦、わんぱく農場の温泉卵、茄子のコンソメ煮、庄内浜黒バイ貝の旨煮、なんぜんじ豆腐、井上農場のトマト、庄内浜のイカの塩辛、奥田流 山形のだし、在来野菜の漬物(民田なす辛子漬け・温海カブ漬け・外内島きゅうり漬け)、イワナのいくら漬け。

朝食会場の近くにある個室部屋も伝統が感じられる

2000年の開業以来、地産地消レストランとして庄内をはじめ、全国で、海外でもファンを増やしてきた「アル・ケッチァーノ」。ガストロノミーツーリズムに積極的に取り組む奥田シェフは、「いつかオーベルジュをやるのが夢だった」と語ります。

大正時代からの由緒ある温泉宿「湯どの庵」を運営することで、伝統と現代の感性を見事に調和していました。庄内地方の観光客数がますます増える予感、ぜひ次の旅先にしてみては?

昔ながらの 「湯どの庵」の看板はそのまま、下に「アル・ケッチァーノ」の看板を設置した

施設データ
所在地:〒997-0752山形県鶴岡市湯田川乙38
電話番号:0235-35-2200
チェックイン:15:00~ 21:00
チェックアウト:11:00まで
館内施設・設備:温泉、露天風呂、駐車場、エレベーター、ウェルカムスペース
宿泊価格:1泊朝食付き1室・一人1万6,500円〜