【長野・大町市 冬の酒蔵旅】“GI信濃大町”に指定!北安醸造の日本酒3種を飲み比べ♪

長野県大町市は長野県の北西部、標高3000m級の山々が連なる北アルプスのふもとに位置します。西側には富山県の立山連峰、北にはスキー場で有名な白馬村、南にはわさび田やワインの産地として知られる安曇野市。大町市ではそばやジビエ、山菜、おやきなどの郷土食、そして黒部ダムカレーといったB級グルメが有名です。そして忘れてならないのが日本酒!おいしい日本酒の旅を満喫してきました。

男清水と女清水、水の飲み比べをしながら街めぐりができる大町市

4月15日~6月中旬まで、立山黒部アルペンルートでは雪の大谷フェスティバルが開催される(画像提供/大町市)

東京駅から新幹線で約1時間30分。長野駅に降り立つと毛穴が引き締まるほどの冷たい空気が漂っていました。しかし新年の陽光はとてもまぶしく、思わず深呼吸したくなるすがすがしさ。今回は長野駅からさらにバスに乗って、雪景色も混じる山をこえて大町市へと向かいました。

大町市は水の街。市内には27カ所もの水源があります。そのうち、男清水(おとこみず)と呼ばれている北アルプスの上白沢の湧水と、女清水(おんなみず)と呼ばれている標高900mの里山、居谷里の湧水があり、信濃大町駅からまっすぐと続く大町商店街の東側では女清水を、西側では男清水を水道水として使っています。

どちらの水も必要最低限の殺菌処理だけを施しているので、「自宅で蛇口をひねったら北アルプスをはじめ雄大な山々の天然水が飲める」のだとか。

周囲を美しい山々に囲まれた大町市は、大自然からあふれ出てくる湧水を水源としている(画像提供/大町市)

なんともうらやましい!そんな土地で醸(かも)された日本酒は絶対においしいに決まっていますね。日本酒の原材料は水と米。そお米も土地の水で育ちますから。二つの湧水の水汲み場(上写真)が街に10カ所以上もあるので、マイ水筒などを持ち歩けば男清水と女清水の飲み比べをしながら街の散策を楽しめます。

ちなみに大町市の男清水と女清水は、二つを合わせて「縁結びの水」と呼ばれているのだそう。昔から男の子がほしい夫婦は男清水を、女の子がほしい夫婦は女清水を飲んでいるのだとか。カップルやご夫婦で行けば、今後も二人には何かご利益がありそう。不思議な水です。

運気UPも間違いなし!?大黒天様とゆかりの深~い「北安大國」

「北安大國」の銘柄で知られる大正12 年創業の酒蔵、北安醸造(画像提供/大町市)

大町市では毎年9月になると、参加証となる酒器を購入し、徒歩圏内で散策できる3つの酒蔵(北安醸造、薄井商店、市野屋)を呑み歩きできるイベントも開催されます。今回は大町商店街通り近くにあり、すぐ近所に女清水の水汲み場もある北安醸造さんをご紹介。

北安醸造のすぐ近くにある2mほどの高さの大黒天様(画像提供/北安醸造)

大町市の北部にある北安醸造は大正12年(1923年)に創業。塩の道、千国街道と善光寺へ通ずる街道の分岐点となる位置に2m以上もの大黒天様が鎮座しており、この近所にある北安醸造はこれにあやかり「大國正宗」(だいこくまさむね)という銘柄の清酒を製造したのが始まり。後に「北安大國」と改銘をし、現在に至ります。

酒造りの風景。真心を込めて実直に醸す蔵人たち(画像提供/北安醸造)

大町市の3つの蔵のうち一番小さな酒蔵ながら、創業以来、小谷杜氏(とうじ)、蔵人、社員が和と真心をもって酒を醸し続け、昨年、創業100周年を迎えた北安醸造。昔ながらの伝統に支えられた安心感のあるお酒に、地元住民をはじめ全国にそのファンが広がっています。

大正12年創業時の梁(はり)や木の看板が100年もの歴史を物語っている(画像提供/北安醸造)

北安醸造は大町市では最大級の木造建築で、二階に麹室がある珍しい造り。創業当時から100年以上もかけられた梁(はり)がその歴史を刻んでいます。

ご近所にある大黒天様のすぐ隣には女清水の水汲み場もあるので、北安醸造と大黒天様を訪れたついでに、湧き水をめぐることもできます。巨大な大黒天様のパワースポット、きっとご利益があることでしょう。

“北安大國”の大黒天様が笑顔で福を呼んでくれそう

「北安大國 純米大吟醸原酒」(写真中央)。他に100周年記念の限定酒も話題になっている(画像提供/北安醸造)

北安醸造では安曇野の酒米を主な原料米とし、北アルプス伏流水の湧き水で仕込んでいます。2023年6月には「GI信濃大町」に指定され、北安醸造のお酒もいくつかGI信濃大町の認定を受けているようです。

さっそく北安醸造の気になる3酒を味わってみました。北安醸造のホームページ内には通販サイトもあり、酒のタイプやおすすめのペアリング料理例なども見やすいチャートになって掲載されています。今回はその料理と合わせてみました。

北安醸造の蔵元 伊藤敬一郎社長。5代目。(画像提供/北安醸造)

まずは「北安大國 100周年記念 純米大吟醸原酒」(白ラベル)から。兵庫県産の酒米、山田錦を29%まで磨き上げ、伝統的な協会701号酵母で醸した純米大吟醸。パイナップルのような甘いフルーツ香と軽やかな上品な甘さ。

おすすめ料理の「ホタテとブロッコリーの炒めもの」を合わせると、ホタテの甘みとお酒のうまみが見事にマッチ!原酒なので力強く濃厚で、とても豊かなうまみが広がります。

「100周年の節目に、不易流行・温故知新の理念で、過去の経験を検証し、新たなことにも挑戦していきたいとの思いで造り上げました」と語る北安醸造の伊藤敬一郎社長。その言葉通り、伝統を背負った貫禄さも感じさせる、大黒天様の懐のような豊かさ。

大黒天様の笑顔が印象的。飲んだ後もボトルを飾っておけば運気が上がりそう

次は「北安大國 純米吟醸」(紫ラベル)。長野県産の酒米、ひとごこちを使用した、どんなお食事にも合わせやすい万能酒。冷やはもちろん、芯のしっかりとした酒質なのでおかんにもおすすめとか。

おすすめ料理の「だし巻き卵」に合わせてみると、穏やかながらも品の良い吟醸香と、口の中にいっぱい広がる芳醇(ほうじゅん)なうまみが、卵のまろやかさを包み込んで最高のおいしさ!幸せ~!

最後は「北安大國 純米酒 五十九」(緑ラベル)。長野県産ひとごこちを59%まで磨いた、ちょっぴりぜいたくな純米酒。北安大國の純米酒と言ったらこの味を思い浮かべる方も多い、長きに渡って愛されてきた定番酒。

一口目から「うまい!」とうなずきたくなる、私の中ではド・ストライクなおいしさ。心地よい甘みと穏やかな酸味が調和して軽快な飲み口。おすすめ料理の焼き鳥のコクと見事に合い、長年、愛される理由がわかりました。

大町温泉郷で2月に開催される「夢花火と音の祭典」のイメージ(画像提供/大町市)

地元にもしっかり愛される北安醸造のお酒は、伝統が脈々と受け継がれた確かなおいしさ。今回の3酒は少しずつ味わいが違って、それぞれの料理とペアリングすると甲乙がつけがたく、サイト情報を見ながら楽しいペアリング・タイムが過ごせました。

その間、大黒天様がずっとほほ笑みかけてくれて、いつか大黒天様に会いに行かないと!という気持ちに。

大町市では2024年2月の毎週土曜日に「第22回大町温泉郷 夢花火と音の祭典」も開催されます。3つの酒蔵を訪問しながら街を水めぐりし、温泉でいやされながら、冬の夜空に打ち上がる幻想的な花火を楽しまれてみてはいかが?今ならまだホテルなども予約が間に合うはずです。

【北安醸造】
所在地:大町市大町2340-1
電話:0261-22-0214
アクセス:信濃大町駅から徒歩15分、タクシーで5分
定休日:土日祝日
蔵見学:冬場は酒造りに専念しているため対応していないが、他の季節は事前に電話予約すれば蔵見学に対応している。