【セルビア】ダイナースクラブ「大使館を訪ねて」セルビア料理と伝統舞踊に触れる文化体験

普段なかなか踏み入れることのできない大使館。先日、クレジットカードのダイナースクラブが主催する「カルチャーラボ 大使館を訪ねて」に参加してきました。第11回の国はセルビアです。東京港区にあるこの建物、実は、かつて音楽プロデューサーの つんく♂ さんが住んでいた場所でもあるそうです。外交の拠点でありながら、日本のポップカルチャーともさりげなく接点を持つ空間。その背景を知ると、建物自体がひとつの物語を帯びているように感じられました。扉をくぐった瞬間に漂うのは、静かな緊張感と温かなもてなしの空気。外交の場であると同時に、文化を伝える“窓”としての役割を担う場所であることを、空間そのものが語っているようでした。

140年以上続く、日本とのつながり

当日は大使館アシスタントの長門ティヤナさん進行のもと進められました。冒頭では、右の参事官のミラン・グルイッチさんもセルビアの魅力を語ってくださいました。

セルビアには日本と同じように四季があることなどの基本情報から観光スポット、食文化まで幅広く紹介してくださいました。

セルビアと日本の交流は140年以上に及びます。1882年に、当時のセルビア国王ミラン・オブレノヴィッチ1世と明治天皇が書簡を交わし、友好関係が始まったことにも触れられ、大使館にもその際の手紙が展示されています。

遠く離れた東欧の国でありながら、日本との間には確かな積み重ねがある。その背景を知ることで、これから紹介される文化や食への理解も自然と深まっていきます。

セルビア原産のあの植物

実は、日本とセルビアには意外な接点があります。

日本の夏の風物詩ともいえる「蚊取り線香」に使われている除虫菊は、もともとセルビア原産の植物です。その種子を創業者の上山英一郎氏が入手し、和歌山県で栽培を始めたことが、日本の蚊取り線香づくりの原点とされています。1890年には棒状の蚊取り線香を開発し、1902年には現在広く知られている渦巻型を完成させました。

この縁はいまも続いています。金鳥の現社長である上山直英氏は、「在大阪セルビア共和国名誉総領事」を務めています。また、2025年の大阪・関西万博では、金鳥がセルビア館と連携し、「除虫菊の日」と題したイベントを開催しました。

さらに、グルメサイト「食べログ」においては、大阪・関西万博会場内のレストランの中でセルビア館のレストランが高い評価を獲得し、外国パビリオンの中でトップ評価となったことも話題になりました。

食文化の中心にある「パプリカ」

今回、特に印象に残ったのは食文化です。セルビアはパプリカの名産地として知られ、家庭料理に欠かせない存在なのだそうです。

会場で振る舞われた料理にも、鮮やかな赤が印象的な一皿が並びました。代表的なのが、焼いたパプリカをペースト状にした「アイバル」。甘みとほのかな燻香が重なり、パンや肉料理に添えるだけで味わいに奥行きが生まれます。素材の力強さを素直に感じられる味でした。

白チーズと野菜を合わせたサラダや、とうもろこし粉を使ったパンも提供され、いずれも滋味深く、日々の食卓を大切にする文化が伝わってきます。派手さよりも、素材と向き合う姿勢。その中核にパプリカがあることがよくわかります。

個人的にはこちらのほうれん草ロールがとても美味しかったです。長門ティヤナさんはセルビアの料理教室も開催しており、YouTubeで発信もしているのでチェックして作ってみようと思っています。

音楽と舞踊が映す国の表情

文化紹介の後には、伝統舞踊「コロ」の披露も行われました。手を取り合い、円を描いて踊るスタイルは、共同体を重んじる精神の象徴のようにも映ります。

旋律にはどこか哀愁がありながら、同時に芯の強さも感じられます。歴史の中でさまざまな文化の影響を受けてきたセルビアならではの響きです。食と同様に、音楽もまた土地の記憶を映すものだと実感しました。

大使館という文化の交差点

今回の取材を通して印象に残ったのは、大使館が単なる外交施設ではないということです。料理を味わい、音楽に触れ、歴史の断片に耳を傾ける。その体験が、国と国との距離をゆるやかに縮めていきます。

セルビアという国名を聞いて、具体的なイメージを持つ人はまだ多くないかもしれません。しかし、パプリカの鮮やかな赤や、温かなもてなし、円を描く踊りの躍動感を体験すると、その輪郭は確かなものになります。

140年以上続く日本との交流。その歴史の延長線上にある今回の催しは、単なる文化紹介ではなく、現在進行形のつながりを感じる時間でした。

大使館を後にする頃には、セルビアという国が、知識としてではなく、味や音、空気感とともに記憶に残っていました。文化とは、五感を通して理解するものなのだと、あらためて感じた取材でした。

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