【食べるJAPAN美味アワード】の新部門「シェフが選ぶ美酒アワード2026」で輝いた日本酒
料理人の五感と経験が、日本酒の価値を再定義する――。和食、フレンチ、イタリアン、中華の第一線で活躍するトップシェフたちが、料理との相性という視点から日本酒を評価する「シェフが選ぶ美酒アワード2026」が、【食べるJAPAN 美味アワード】内に新設されました。トップシェフ6名が審査委員となり採点、先日、その受賞酒が発表されました。中には日本酒業界初の独自製法による熟成酒も三つ星に選出されました。
トップシェフたちの“ペアリング視点”で選ばれる新アワード
「シェフが選ぶ美酒(日本酒)部門」授賞式の様子

日本酒の評価といえば、これまでは香りの華やかさや味わいのバランス、精米歩合や醸造技術といったスペックに注目が集まりがちでした。しかし本アワードが掲げたのは、「料理を引き立てる力」という実践的な視点。
審査委員長の山下春幸シェフとアワードのパンフレット

審査はすべてブラインド形式で実施され、銘柄や蔵元の情報を伏せた状態でテイスティングが行われました。審査員は和食、フレンチ、イタリアン、中華それぞれのジャンルを代表するシェフ6名。「HAL YAMASHITA」エグゼクティブシェフの山下春幸氏を審査員長に、そうそうたる顔ぶれがそろいました。
彼らは実際に料理との相性を想定しながら、味わいのバランス、酸の質、余韻の長さ、温度帯やグラスによる変化まで丁寧に審査しました。「食前酒」「食中酒」「食後酒」というシーン別の視点も加味。単体でのインパクトではなく、コース料理全体の流れの中でどう機能するかという、よりレストラン実務に近い観点から評価が行われました。
その結果、最高評価の三つ星に、各料理ジャンルの特性を象徴する一本が選ばれました。
“料理のパートナー”にふさわしい、各ジャンルを象徴する4銘柄
審査員の冨澤浩一氏が和食部門を発表。三つ星に「〆張鶴 純 純米吟醸」が選出された。

・【和食部門】三つ星
“静かに寄り添う美学”を体現した逸品「〆張鶴 純 純米吟醸」(宮尾酒造、新潟県)
繊細な米のうまみと透明感を備えた純米吟醸酒が高く評価されました。出汁の奥行き、季節の魚介のうまみ、山菜のほろ苦さといった微細なニュアンスを壊すことなく、そっと寄り添う設計のお酒。主張しすぎず、しかし存在感は確かにある、その絶妙なバランスが料理人たちの支持を集めました。
同蔵の「〆張鶴 大吟醸 金ラベル」と「〆張鶴 純米大吟醸 RED LABEL」は、中華部門で二つ星も受賞しました。
長い歴史の中で、もともと和食に合うように醸されてきたのが日本酒。「よし邑」総料理長の冨澤氏は「(どのお酒も素晴らしく)甲乙、付け難かった」と採点の難しさを語りながら、「今回の結果により、和食以外にもイタリアンやフレンチ、中華などにも日本酒が合うことが証明された」と説明しました。
川島孝シェフが絶賛した「岩の井 i240 純米吟醸 五百万石」

・【フレンチ部門】三つ星
“酸が導く余韻”で料理を完成させる「岩の井 i240 純米吟醸 五百万石」(岩瀬酒造、千葉県)
岩瀬酒造は国内でも珍しい硬度240度の超硬水を使って醸している酒蔵。酸味と苦みが特徴で、それがバターやクリームを使った濃厚なソースや、肉料理のうまみに対しても重たくなりすぎず、口中をリセットしながら次の一皿へと導く力が評価されました。このお酒はイタリアン部門でも二つ星を、中華部門でも一つ星を獲得。
フレンチ「ラ・ロシェル」総料理長の川島シェフは「酸味と苦み、そして味わった時の鼻に抜ける風味がとても印象的」とコメントしました。
林祐司シェフが絶賛した「一ノ蔵 Madena」

・【イタリアン部門】三つ星
“熟成の力強さ”で広がる美食の新境地「一ノ蔵 Madena」(一ノ蔵、宮城県)
世界的にも有名な「マデイラワイン」にヒントを得たという独自製法の熟成酒。地元・鳴子温泉の温泉熱が伝わる場所に熟成所を建てて、そこで長期加熱しながら熟成させた日本酒業界初とも言われる製法。
一口含んだだけでパワフルなカラメル感が押し寄せてくるのが印象的。優美な琥珀色で、濃醇でとろりとしたうまみとしっかりした酸味が個性的です。このお酒はフレンチ・中華・和食の部門でも一つ星を受賞。
國際グループレストラン統括プロデューサーで、ポルシェレストランの総料理長を歴任している林シェフは、「ハーブやスパイスを使った料理とも好相性。グラスによってお酒がさまざまな表情に変わるのも魅力でした」と説明しました。
五十嵐美幸シェフが絶賛した「出羽桜 貴醸酒 MATURED」

・【中華部門】三つ星
“甘美なコク”が濃厚な中華を包み込む「出羽桜 貴醸酒 MATURED」(出羽桜酒造、山形県)
銘柄名にもなっている“貴醸酒(きじょうしゅ)“とは、仕込水の一部をぜいたくに日本酒に代えて醸した日本酒のこと。蜂蜜を思わせるような甘さの日本酒を、蔵の中で静かに熟成を重ねて、深みのあるまろやかな味わいに仕上げた甘口熟成酒。香辛料や濃厚な味付けに負けない存在感を持ちながら、後味はなめらか。
中国料理「美虎」のオーナーシェフ 五十嵐氏は「一番(このお酒に合わせて)こんな料理をつくりた〜い!!と思わせたお酒でした」と笑顔でコメントしました。このお酒はフレンチ・イタリアンの部門でも一つ星を受賞しました。
二つ星と一つ星に輝いた受賞酒のリスト。エントリーしたお酒のうち上位33%にランクインした実力派

また本アワードでは、味わいに加えてラベルデザイン部門も設置。海外市場を視野に入れた発信力、ストーリー性、視覚的な完成度も重要な評価対象となりました。料理と同じく、日本酒もまた“体験”であるという考え方が反映されています。
これらすべての受賞酒リストは公式ホームページに掲載されています。「シェフが選ぶ美酒アワード2026受賞酒発表」でぜひ検索してみて。
左:審査員の「ホテルインターコンチネンタル東京ベイ イタリアンダイニング ジリオン」料理長の阿部洋平氏、右:総合プロデューサーの島田律子さん
日本酒は温度、時間、料理の組み合わせによって変化し、ワインに匹敵する奥行きを感じさせます。
「フレンチやイタリアンだからワイン」、「中華だからビールや紹興酒」ではなく、次に味わうお酒は各カテゴリーの受賞酒の中から日本酒を選んでみてはいかがでしょう。きっと想像以上の新しい美食を体験できるはず。













