【千葉・勝浦】一棟貸しロッジ「ぐぼう里山SUITE」に泊まり、能楽と非日常ディナーを楽しむ

日本の伝統芸能・能楽に触れ、しかも至近距離で鑑賞することは珍しいのではないでしょうか。たいていは遠くから舞台を眺めているだけ。今回は間近で能を鑑賞しながら食べて呑んで、しかも近隣のロッジに泊まって、さらに自分も舞台に上がって疑似体験までできる、1泊2日の宿泊モニターツアーに参加しました。里山に囲まれたのどかなロッジに泊まり、能を鑑賞しながら味わう地元食材のディナーは格別。外国人も感激しそうな旅。

能楽が素人でも大丈夫、間近で鑑賞できるぜいたくな伝統文化体験

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いつも遠くから眺めていた能舞台。今回は息づかいまで聞こえてきて大興奮(画像提供:ぐぼう庵)

都内から車を走らせて約2時間ちょっと。電車で向かうなら東京駅から特急わかしお号に乗って、勝浦駅までちょうど1時間30分。勝浦駅からはタクシーで15分。今回、私は友人と車にて、房総半島の南東部、千葉県勝浦市の目的地に到着しました。

目の前には夷隅(いすみ)川がおだやかに流れ、川沿いには竹林がたくましく生い茂り、大小のいくつかの古民家がのどかにたたずんでいます。

そんな里山の中で二番目に大きい豪農の館が「ぐぼう庵能舞台」。ここで美食&美酒と能鑑賞を楽しんだ後、近所のロッジに移動して泊まり、翌日も再びこの能舞台に戻ってワークショップに参加するという充実プラン。初めて尽くしの旅に心が躍ります!

現地に到着してみると「勝浦ぐぼう庵能舞台 美食堪能“能旅”宿泊プラン」のモニターツアーに参加する方々の車が、すでに駐車場に何台かとまっていました。まさかここに能楽堂のような舞台があるとは…。さっそく館に潜入。

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演者が扇子を振って舞いだすと、その風がほほにそよいでくる。こんな至近距離から鑑賞できるとは! (画像提供:ぐぼう庵)

中に入ると5メートル四方ほどの能舞台が広がっており、正面には大きな松の絵が描かれていました。演者の入退場に使われる「橋掛り」がないだけで、能舞台がすぐ目の前に。舞台の前方と右側にテーブル席やお座敷が設けられており、全席が能舞台と直結したような隣り合わせの超特等席! 限定16席。こんなに間近で能を鑑賞できるとは、なんてぜいたくなのでしょう。

始めに、能楽と狂言の違いや、謡(うたい)と呼ばれるせりふ、舞(まい)と呼ばれる体の動作といった能楽の基礎知識などを説明してくれたのは、能楽師観世流シテ方の武田宗典氏と武田友志氏。

演舞の前にどんなシーンなのかをこまめに説明してくれるので、私のような素人でも安心でした。「嵐山」や「胡蝶」といった能の代表的な舞を、五感を研ぎ澄ませながら鑑賞します。

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右が武田宗典氏、左が武田友志氏。息がぴったりの演舞とおなかの底から響き渡る謡にどんどん引き込まれる。(画像提供:ぐぼう庵)

演者の顔は無表情のままなのに、全身の動作や眼光のきらめき、指先からあふれ出る感情。これが室町時代から続く日本の伝統的な歌舞演劇なのかと思うと、昔の人はどれほど感受性が豊かであったことか、と思わず想像をめぐらせてしまいます。

日本語がわからない外国人の方ですら、能楽や歌舞伎に感動できるのは感受性や想像力が豊かであるからでしょう。「ぐぼう庵能舞台」では今後、神楽などさまざまな伝統芸能の鑑賞を宿泊予約とセットで企画しているようです。

地元の食材が満載!本格ディナーとお酒が楽しめる2時間

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鴨川産アカハタの前菜と鴨川産鶏肉のカリフラワーのロースト添え(画像提供:ぐぼう庵)

夕食は、申込時にフレンチか和食からえらべました。フレンチは「勝浦Herbe」、和食は「お食事処うちだ」が用意。能舞台の脇に簡単なキッチンが併設されており、仕込んできた料理を温めてレストランと同レベルのおいしいお料理が楽しめました。

ただの仕出し弁当などではなく、地元の飲食店によるこの日のために特別に持ち込まれたコース料理。日本酒やワインなども注文できました。

フレンチのコースでは鴨川産アカハタの前菜からスタート。アカハタの繊細なうまみに、ジューシーな柑橘、せとかの果肉が甘味と酸味をプラス。勝浦市白木の地でハーブやエディブルフラワーの栽培、加工販売を手掛けている「勝浦Herbe」の一品らしく、フェンネルがあしらわれ、爽やかな風味が広がります。

鴨川産の鶏肉は低温調理されているのかしっとりとやわらかい歯ざわりで、ほのかに甘いカリフラワーのローストと好相性。

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自家製人参のポタージュとほうぼうのグリル (右のみ画像提供:ぐぼう庵)

乾杯時には地元・千葉勝浦市産の日本酒をいただきましたが、それ以降は春らしくロゼワインを注文。自家製人参のポタージュは人参のコクが濃厚で、とてもまろやかな舌触り。ほうぼうのグリルはふんわりやさしい味わいで、酸味の効いたソースが絶品。

バゲットでソースをすくい取って残さずに味わい尽くしました。自家栽培のエディブルフラワーが散らしてあって映える一皿。

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クライマックスの「羽衣」のシーン。男性が演じているのだが女性にしか見えなくなる (画像提供:ぐぼう庵)

舞台では能楽の説明と鑑賞が交互に行われ、それと同時並行で料理ごとの説明とお食事が続きます。能舞台では昔話でもおなじみの「羽衣」へ。天女が羽衣を返してもらい、代わりに漁夫に舞を見せて月へと上っていくシーン。

誰でも一度は見たことのある天女のお面を演者が付けて、きらびやかな装束を身にまとって舞台に登場します。

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ハマグリの玄米リゾットと国産豚の赤ワイン煮込み(画像提供:ぐぼう庵)

その頃、お料理もクライマックスへ。今が旬のハマグリの玄米リゾット。自家栽培のスナップエンドウはシャキシャキしており、その美しい芽までのせられていました。畑のイメージが膨らみながら春を満喫。

最後は国産豚の赤ワイン煮込み。男性や外国人のお客様でも満足できるボリューム。地元、多古町の香り豊かなゴボウが添えられており、肉の風味と相性が抜群。やわらかいちぢみ小松菜や、マッシュをしたキャッサバも独特のおいしさ。

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今回のツアーで体験したのはフレンチだが、今後は和食をメインに提供していく予定とか

最後のチーズケーキにはバルサミコ酢がかけてあり、ローズマリーもトッピング。いつものレモンとミントのチーズケーキとはまったく異なる衝撃的なおいしさで、テイクアウトして持ち帰りたい衝動に駆られました。

木の温もりが懐かしいロッジ、小鳥のさえずりで目を覚ます

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木の温もりが感じられる「ぐぼう里山SUITE白木ヴィレッジ」に宿泊(画像提供:ぐぼう庵)

五感で堪能する能楽と美食の2時間はあっという間。能舞台とコース料理が終わると、思い思いに「ぐぼう庵能舞台」の席でくつろげます。着替えを終えた演者が一般客の席に後から加わって、舞台の裏話なども直接聞けて貴重な時間となりました。

眠くなってきたら、車で7分の「ぐぼう里山SUITE白木ヴィレッジ」のお宿へ移動(お酒を飲む方は送迎もプラン内のサービスになっているので依頼が可能)。一軒家を丸ごと貸し切りができるロッジで、ペットと宿泊できる1棟を含め3棟あります。1棟あたりの宿泊定員は5人程度(最大16名)。

近隣に「勝浦つるんつるん温泉」があるのですが、私たちが訪問した日はラッキーだったのか、つるつるのお湯が出て感動しました。お湯の源泉が同じなのでは?と思うとうれしくなりました。

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朝食の様子。簡単な調理器具や冷蔵庫があるので軽食程度は自分たちで作ることもできる

約400坪の広い敷地に3棟があり、ワーケーションで利用したり、海や里山の新鮮な食材を調達して自分たちで料理をしたり、友人や家族とBBQやテントサウナ(要予約)を楽しんだりできます。小鳥のさえずりで目覚め、外に出てみるとのどかな里山や田園が広がり、ヨガでもしたくなるような気分に。

朝食後に送迎の車で「ぐぼう庵能舞台」に戻り、実際に白足袋を履いて私たちも神聖な舞台に上がらせていただきました。昨日の能楽の演者たちから、喜びや悲しみなど能の基本動作を教えてもらい、みんなでやってみました。

ワークショップの後は、「お食事処うちだ」の美味しい和食の仕出し弁当を堪能。1泊3食のぜいたくな旅の締めくくりとなりました。

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ぐぼう庵の外観。この中に能舞台が広がる

今回は実証のための宿泊モニターツアーとのことでしたが、オーナーの説明によると、今後は24名までの団体客(最少8名から催行が可能)向けに能狂言に加え、神楽や長唄などの伝統芸能鑑賞付きの宿泊プランを開発していくとのこと。もちろん、宿泊だけの一棟貸し利用も大歓迎とのことでした。

近隣には勝浦式担々麺で有名な「江ざわ」や、日帰りできる「勝浦つるんつるん温泉」、コース料理がおいしかった「勝浦Herbe」のカフェ、車で15分ほどで行ける勝浦漁港や勝浦海中展望塔などもあります。次の休暇の折に、まずは気軽に泊まりにでかけてみてはいかが?

ぐぼう庵(能舞台):千葉県勝浦市中倉10番地
ぐぼう里山SUITE白木ヴィレッジ:千葉県勝浦市白木339
お問合せ電話:070-3768-0400

施設の詳細はインターネットで「ぐぼう里山」で検索してみてください。